アメリカの大義

 国連はアメリカの覇権に大義を与える場ではなく、アメリカの覇権を承認する”会盟”の場である。
 純粋な力だけで維持されてきた近代の覇権システムにはそもそも”王者の権威”は必要とされなかった。
 それに変わるモノは、強いて言えば覇権システムがもたらす国際秩序という名の”平和”であった。つまり平和とは目的ではなく、覇権システムを維持する為の手段でしかない。
 大英帝国の覇権は、本来手段である筈の平和に固執しすぎたが故に失われた。
 その反省の上に覇権を継承したアメリカは当然に平和に重きを置いていない。むしろ戦争を覇権維持のための手段として用いている様に見える。
 アメリカの覇権を支える大義は、冷戦時代には共産主義に対する脅威であったが、冷戦終結後には民主主義の拡大へと変わる。
 冷戦期には、親米で有れば国家の政治体制には拘らなかったアメリカが、一転してイラク攻撃に転じた事でも分る。