農業の誕生

 人類の歴史は地球環境に大きく左右されるが、中でも大きいのが気温の変動である。
 人類社会はその歴史のほとんどを狩猟採取によって維持されてきた。
 狩猟採取社会では大きな人口を維持出来ないが、労働時間はさほど必要としなかったのである。
 だが次第に人口増加圧力が高まると、生産性の低い地域では人口圧力に対抗するために農耕が営まれるようになる。
 農業は狩猟採取に比べて高い労力を要求され決して安定した手段とは言えなかった、狭い土地で高い収穫を得ることが出来ると言う利点がある。そして一度農業が始まると、人口は急激に増え、もはや狩猟採取では賄えないようになる。
 農業は人類社会を劇的に変化させる正のフィードバックを発生させた。
 狩猟採取社会では食糧は共有物であり、これを如何に分配するかが社会の規範として存在した。これが農耕社会になると食糧に対して所有の概念が生まれる。
 農業活動は余剰生産物を発生させ、食糧生産に関与しない人々を生み出すことになる。非生産者はいつしか宗教的、政治的指導者となる。
 これが階級社会の発生である。