平和の代償2
天正18年末、天下統一を成し遂げた秀吉は「浪人停止令」を出した。
これは決まった武家奉公先も耕すべき田畑も持たないモノ達を「浪人」として村から追い出せと言う命令である。
ここで言う「浪人」とは時代劇で見るような、仕官先を求めて奔走する武士とは明らかに違う。
手に職を持つモノは除外されているが、基本的に村に住むのは定職(武家奉公か農業従事)を持つモノに限られる。
その上で、武士と農民を分ける「刀狩り」が実行されるのである。
翌19年、天下統一の総仕上げとなった奥州の一揆にめどが付くと、いよいよ唐入りの為の大動員が発令される。
その直前に「身分統制令」と呼ばれる三ヶ条が発せられる。
まず、奉公人が町人や農民になる事を禁じている。次いで農民が耕作地を捨てて都市で商いや賃仕事に就くことを禁じている。そして最後に暇乞いを得ない奉公人を雇う事を禁じた。
秀吉の意図はどうあれ、これがそれまでの自由な職業の転換を止めることになる。
職業と身分が不可分な社会では「職業選択の自由」は存在しない。