ドイツ(6)

 ドイツでは日本の様に下克上は起こらなかった。
 ヴァレンシュタインも皇帝に反旗を翻すことなく、皇帝のおくった暗殺者の凶刃に倒れた。
 総体として、ヨーロッパでは素性のハッキリしない人物が王に上り詰めた例というのは極めて希である。咄嗟に思いつくのはルネッサンス時代の傭兵隊長スフォルツァや、フランス皇帝ナポレオン一世くらいであるが、どちらも古い家系と婚姻によって結ばれる事で正統性を獲得しようとした。それでも長く家系を維持することは適わなかったが。
 さて、ヴァレンシュタイン兵站の側面で大きな軍事改革を実現した。彼はこれまで略奪によって賄われていた軍隊の維持費を戦争税という形で合法化した。これによりヨーロッパに常備軍が生まれ、分権型の封建制から集権型の絶対君主制へと移行するのである。