鎖国と開国

 この場合の鎖国政策とは他国からの移民を原則として受け入れないことを指し、逆に開国政策とは移民を積極的に受け入れる政策を指す。
 塩野七生女史は著作の中でこの意味での鎖国と開国について書いている。
 鎖国によって栄えた例としてヴェネツィア共和国を、逆に開国で栄えた例として古代ローマ帝国を挙げている。
 どちらも国家として約千年の寿命を持ち、両政策に優越はないと言う結論に至っている。
 翻って我が国はと言えば、長く鎖国政策を採っていた為に単一民族であるという幻想があるが、古代には半島を経由して大陸から多くの移民から成り立っていた。
 中華文化圏には元々国境と言う概念がなく、人口の流動が激しかったが、島国の日本は海によって国境を規定することが出来た。加えて、列島内部にまだ未開地*1があったこともこの内向きの政策を助長した。
 国の勃興期には人口はいくらあっても良く、開国政策は有効に思える。だが、絶え間ない人口流動は国家としての同一性の維持を困難にする。遣唐使の停止による日本の第一期の鎖国は日本文化を成熟させるために必要不可欠であった。

*1:とはいえ、そこには蝦夷という先住民が居た訳だが。