寒暖周期と思想

 寒冷期にはいると、階級制度の締め付けが強くなる。だが、これが長く続くと不平不満が蓄積する。
 世界の宗教のほとんどは安全弁として寒冷期に発生してくる。逆に温暖期には不平不満が少なくなるので、布教活動は実を結ばないのである。
 インドに仏教が発生したのは大寒冷期である。同じ時期に西洋ではギリシア哲学が発達し、東アジアでは孔子により儒教思想が広まった。これが、科学史上に挙げられる「精神革命」の時代である。
 キリスト教が発生したのも寒冷期だし、この時期には中国では一時漢王朝が断絶しているが、仏教が中国に入ったのがこの時期である。
 同じくイスラム教が勃興したのもやはり寒冷期に当たるが、仏教が朝鮮半島を経て日本へ伝来したのもこの頃である。
 次の寒冷期はモンゴルの勃興期に当たり、ヨーロッパはローマカトリックの権威が高まって十字軍が組織されている。そして日本では鎌倉新仏教が盛んになる。
 あらゆる宗教はその発生時には反体制的な要素を持つ。だが一度宗教が力を持つとすぐに形式化し体制と融合してしまう。それが行き過ぎると原点に立ち返ろうという動きが生まれる。
 こうして歴史は繰り返される。